【糖尿病】血糖コントロールで未来を守る生活術

おすすめ健康管理

1.糖尿病は「血管の病気」って知っていますか?

「糖尿病って、甘いものを食べすぎるとなる病気でしょ?」
よくそう言われますが、実はそれだけではありません。
糖尿病は、血糖値が高い状態が長く続くことで全身の血管にダメージを与える病気です。血管へのダメージは、合併症の大きな原因となります。

血管は体中に酸素や栄養を運ぶ大切な通り道。ここが傷むと、目や腎臓、神経などに不調が出ます。しかも進行しても最初のうちは自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに悪化してしまうのです。

国際糖尿病連合(IDF)の2024年報告によると、世界では5億8,900万人、日本では約1,080万人が糖尿病を抱えています。2050年には世界的には8億人を超えると予測されており、他人事ではありません。国際糖尿病連合

血糖コントロールの目的は、「今の症状を抑えること」ではなく、5年後、10年後も健康な生活を送るためです。


2.糖尿病の種類と特徴

糖尿病には大きく分けて3つのタイプがあります。

1型糖尿病

体の免疫システムが誤って自分の膵臓のインスリンを作る細胞を攻撃して破壊してしまう自己免疫疾患です。これによりインスリンの分泌がほとんどなくなります。


主に子どもや若年層に多く、遺伝的な素因が関係しています。


また、何らかの環境要因(ウイルス感染など)がきっかけになることも考えられていますが、詳しい原因はまだ完全にはわかっていません。1型糖尿病の潜在的な環境誘因としてのウイルス
先天性に近い自己免疫反応の異常が背景にあるため、インスリン注射が欠かせません。

2型糖尿病

日本で最も多いタイプで、主に生活習慣が関係しています。
食べ過ぎ運動不足肥満年齢、そして遺伝的な体質が重なって発症します。

この病気では、体がインスリンをうまく使えなくなる「インスリン抵抗性」が起きたり、インスリンを作る膵臓の細胞が疲れて働きが悪くなったりします。
そのため、血糖値が高くなりやすくなります。

生活習慣の改善や薬を使って血糖をコントロールすることが大切です。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は、妊娠中に起こる一時的な糖代謝の異常です。
妊娠中に分泌されるホルモンの影響で、インスリンの働きが悪くなり、血糖値が上がりやすくなります。

多くの場合は出産後に正常に戻りますが、将来2型糖尿病になるリスクが高まることがわかっています。

妊娠糖尿病が見つかった場合は、血糖管理と定期的な検査が必要です。


3.糖尿病を放置すると起こる三大合併症

糖尿病を長期間放置すると、血糖値が高い状態が続くことで血管がダメージを受け、体のいろいろな部分に悪影響が出てきます。

網膜症

血糖値が高い状態が続くと、目の奥にある毛細血管が傷つきやすくなります。

初めは自覚症状がほとんどありませんが、進行すると視力が徐々に低下し、放置すると最悪の場合、失明することもあります。

腎症

腎臓の中の細い血管も高血糖でダメージを受け、ろ過機能が悪くなります。

最初はむくみ尿の異常(尿が泡立ちやすくなるなどもあるが、尿検査でやっとわかるものも)などわかりにくい症状が出ますが、進行すると老廃物を体外に排出できなくなり、透析治療が必要になることもあります。日本では糖尿病が透析の最も多い原因です。わが国の慢性透析療法の現況

神経障害

高血糖によって神経を栄養する血管が傷つき、神経自体もダメージを受けます。

手足のしびれ、痛み、感覚の鈍さが現れます。感覚が鈍いとけがに気づかず、傷が悪化してしまう危険があります。

さらに糖尿病は動脈硬化を促進し、心臓や脳の大きな血管が狭くなったり詰まり、大血管症として、心筋梗塞脳梗塞など命に関わる病気のリスクも高まります。


4.糖尿病患者が知るべき足壊疽のリスクと予防ケアのポイント

糖尿病が進むと、足の神経が傷ついて痛みやしびれを感じにくくなったり、血液の流れが悪くなったりします。これにより、足に小さな傷ができても気づかず、傷が悪化しやすくなります。
傷が深くなると感染を起こし、重症化すると足を切断しなければならなくなる場合もあります。これを「足壊疽(あしえそ)」と呼びます。

どうすれば予防できる?

  • 毎日、足の裏や指の間をよく観察して、傷や赤み、腫れがないかチェックしましょう。
  • 清潔に保ち、保湿もして皮膚を乾燥させないようにします。
  • 合わない靴やきつい靴は履かず、足に負担をかけない靴を選びましょう。
  • 足に異常が見つかったら、すぐに医師や専門の医療スタッフに相談しましょう。

小さな傷だからと油断していると、足を切断に至るかもしれない怖いですよね。
早めの対策と医療機関との連携がとても大切です。

5.糖尿病予防と進行防止の生活習慣

食事の工夫

■糖質は極端に減らさず、バランスよく適正量を取る
糖質は体のエネルギー源なので、ゼロにすると疲れや集中力がさがってしまいます。むしろ急な糖質制限は筋肉量を減らし、血糖を下げにくい体になってしまうことも。主食・主菜・副菜をそろえて食べるのが基本です。

■ 食べる順番を「野菜 → たんぱく質 → 炭水化物」にする
野菜に含まれる食物繊維は、糖の吸収をゆるやかにし、食後の血糖急上昇を防ぎます。食後高血糖は血管を傷つけ、合併症のリスクを高めるため、最初に野菜を食べるのは効果的です。

■甘い飲み物やジュースなど液体糖質は控える
ジュースは体に吸収されるのが速く、血糖が急激に上がり、それに伴ってインスリンも大量に分泌されます。満腹感も得にくく、知らずにたくさん糖分を摂ってしまうリスクがあります

運動の習慣

■有酸素運動(ウォーキング、サイクリングなど)をしてみる
有酸素運動は血中の糖分を筋肉でエネルギーとして使い、血糖値を下げやすくします。また、心肺機能や血流も改善し、合併症予防にもつながります。

■筋トレを週2回以上してみる
筋肉は糖を貯める“倉庫”のような役割を持っていて、筋肉量が多いほど血糖のコントロールがしやすくなります。筋トレはインスリンの効きを改善する効果も確認されています。

体重・体型管理

■男性はウエスト85cm未満、女性は90cm未満を目安に
お腹まわりの脂肪(内臓脂肪)はインスリンの働きを邪魔する物質を出すため、糖尿病の大きな原因になります。内臓脂肪は皮下脂肪よりも燃えやすく、運動と食事で減らすことが可能です


6.糖尿病の薬を自己判断でやめる危険性

糖尿病の薬やインスリンは、「今の血糖値を下げる」だけじゃなく、将来の合併症を防ぐためにも使われています。
血糖コントロールが悪い状態が続くと、数年後に目の病気(失明の原因になる)、腎臓の病気(透析が必要になる)、心臓や脳の病気が起こるリスクがぐんと上がります。

薬をやめると、血糖値は少しずつ高くなり、知らないうちにこうした合併症が進んでしまうことがあります。
もし副作用や低血糖が心配なときは、自分で中止せず必ず主治医に相談してください。


7.糖尿病に関するよくある誤解

■「甘い物を控えれば大丈夫」
実は、ごはんやパン、麺などの主食に含まれる糖質も血糖値を大きく上げます。甘いお菓子だけでなく、主食の量や食べ方にも注意が必要です。

■「運動は週末だけでOK」
まとめて動くよりも、毎日こまめに体を動かすほうが血糖コントロールに効果的です。散歩や家事など、日常的な活動も大切です。

■「血糖値が正常なら薬はやめられる」
血糖値が良くなっても、膵臓の機能は少しずつ低下していく場合があります。自己判断で薬をやめると、再び血糖値が上がってしまうこともあるので、必ず医師と相談しましょう。


まとめ:今日からできる糖尿病予防

糖尿病は静かに進行しますが、日々の食事・運動・薬の管理で未来は大きく変えられます。
血糖コントロールは、今の健康だけでなく10年後の生活の質を守る投資です。


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